中国英雄伝

2012/05/17 | は行その他
お気に入り度:★★★★

久保田千太郎作、久松文雄、貝塚ひろし画、作画:園田光慶『中国英雄伝』
中国英雄伝 内容紹介(各巻裏表紙より)
長騫(ちょうけん):果てしない砂漠の彼方にはどんな国々があるのか!?漢の武帝の使節として大月氏国に旅立った長騫。匈奴の捕虜になること10年、苦難の末に大月氏国、大夏を歴訪、シルクロードの開拓者として名を残した男の中の男の栄光!!

高仙芝(こうせんし):正義は存在しないのか!? 暗雲漂う唐の玄宗皇帝の治世の末期、遥かなる西域、亀茲(クチャ)、石国(タシュケント)、大食(タージ)などに転戦する猛将高仙芝。反逆者安禄山の長安侵攻の動乱の中で命を絶たれる猛将の栄光と悲惨を見事に描破した傑作!!

李広利(りこうり):独裁者漢の武帝の下、旅芸人から身を起こし、大宛から血の汗を流すという名馬汗血馬を持ち帰った名称李広利。彼はいかに生き、死んだのか。宿敵匈奴を討ち、シルクロードを疾駆した猛将の生涯を描き尽くした巨編!!

王昭君(おうしょうくん):恋人の陳湯との結婚を夢見ていた絶世の美女王昭君は、何故漢の元帝の後宮に入らねばならなかったのか。そして何故匈奴王呼韓邪単于(こかんやぜんう)の妾となり異国で死なねばならなかったのか。薄命の美女と謳われた伝説の女性像に迫る!!

班超(はんちょう):後漢の明帝の世匈奴が漢土を侵した。文官班超は匈奴討伐軍に志願し、転戦16年屈指の勇者になる。その功で彼は36名の部下を従えぜん善国(ぜんぜんこく)への使者となり、見事この国を帰属させた。以降匈奴の大軍を撃破しながら、尉頭(いとう)、疎勒(そろく)、莎車(さしゃ)、亀茲(きじ)ほか西域50余国を漢に従わせる功績を残した。苦難の30年余年を戦い抜いた班長はついに西域都護になる。
“虎穴に入らずんば虎児を得ず”の名言を残し、異域の鬼と謳われた班長の、血と汗の生涯を描破した超大作!!
中国の英雄を描いたマンガ。
知らない名前ばかりだったが、ハラハラドキドキの物語で、とにかく面白かった。

主に漢の時代の話だが、単純に戦ってばかりだと思っていた漢と匈奴の条約や交流、単于の地位を巡る匈奴の内部分裂など、漢と匈奴の関係や匈奴内の話が興味深かった。

第一巻

【長騫(ちょうけん)】
長騫は、匈奴討伐のために大月氏との同盟の旅に出るものの、匈奴に囚われ十年。そこで匈奴の妻を持ち、子をもうけた。しかし長騫はそれでも大月氏行きをを諦めていなかった。そんな長騫の人生を描いた作品。

【李広利(りこうり)】
漢の武帝の寵愛した玉蘭の口利きで、将軍となった兄・李広利。西域の大宛国を攻め、武帝の執着する名馬汗血馬を手に入れた。しかし匈奴との戦いが彼の運命を変えていく。旅芸人あがりの勇将の栄光と、末期の悲惨さを描く。

第二巻

【高仙芝(こうせんし)】
玄宗の治世の唐末期、猛将高仙芝は、西域支配を統括する安西節度使として西域に勇名を馳せていたが、同じく唐の軍人・安録山が安史の乱を起こすと、高仙芝は運命に翻弄され始める。

【王昭君(おうしょうくん)】
恋人との仲を裂かれ、故郷の湖北から、漢の元帝の後宮へ入れられた美女王昭君。やがて、匈奴王の妾となり自害する、薄命の美女の数奇な運命を描く。

第三巻

【班超(はんちょう)】
漢・明帝のころ、西域経略に情熱を燃やした男、班超。匈奴との転戦、西域攻略三十年におよぶ班超の生涯を描く。
『虎穴に入らずんば虎児を得ず』の由来が描かれている。

中国英雄伝(1)
中国英雄伝(1)
中国英雄伝(2)
中国英雄伝(2)
中国英雄伝(3)
中国英雄伝(3)
作:久保田千太郎 画:久松文雄、貝塚ひろし 作画:園田光慶
講談社 1997-08
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都市の樹木433<ポケット図鑑>

2012/05/16 | 辞書・図鑑
都市の樹木433<ポケット図鑑>
都市の樹木433<ポケット図鑑>
岩崎哲也
文一総合出版 2012-04-27

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お気に入り度:★★★★

実物を観察する楽しみが沸いてくるポケット図鑑。岩崎哲也著『都市の樹木433<ポケット図鑑>』
都市の樹木433 内容紹介
【帯より】
  • 身近な都市の樹木433種類を掲載したポケット図鑑。タイトル種283種に加え、150種の品種や別種、変種なども収録。
  • 葉、花、実などの細かな形状から難しい識別も行えるようスキャン画像、部分アップ画像も多数掲載。
  • 手触りやにおいの特徴も解説。
【表紙内側より】
本書では、都市に自生する日本古来の樹木と外来樹木、植裁されている庭木および公園樹・街路樹などの緑化樹を掲載しました。私たちの生活に、もっとも身近な樹木です。
樹木の見分け方では、葉や花、果実、樹皮、小枝、樹姿、冬芽などの外見的な特徴に加え、出会った一瞬に樹木が見せてくれる情報をすべて見ることが大切です。じつは、葉のみ、花のみ、あるいは幹のみといった部分的なものだけを見るのは、もっとも難しい見分け方です。
本書では、樹木全体をとらえて見分けるコツとともに、ルーペを用いて観察するポイントも紹介しています。ルーペで拡大すると、植物の体が持つ繊細な違いや変化を簡単に見分けることができます。
上記の帯の内容紹介にあるように、とにかくさまざまな特徴が掲載されていて、図鑑を見ながら実物を観察する楽しみが沸いてくる。
文庫本サイズだから携帯も考えているだろう。
ということで、実際に野外へ出て、その使い勝手を試してみた。

家から公園まで歩き、その道程で見つけた樹木を探してみると、あっさり名前が見つかった。
公園に着いて、植えられている木も調べてみたが、比較的簡単に見つけられる。
本書には、ページの端に、葉数・形状・生え方、裸子被子、落葉常緑針葉広葉高木中木低木などの情報が、色分けして記載。
その気の利いた工夫のおかげで、目的の樹木を探すのにとても便利で、さらに見た目による見分け方を基本にした掲載順序も、樹木検索を楽にしてくれた理由だ。
そういう検索のしやすさと、多くの情報が実物との比較を楽しくさせてくれる図鑑だった。

一方で、都市樹木のデメリット(落ち葉処理、木の実の処理、樹木の倒れなど)については触れられて折らず、緑化計画にデメリットがどのように考えられているのかを知ることができなかったのが残念だった。

ちなみに、本書ではルーペでの観察を勧めているが、背の高い木は、葉や花が上の方にあるので、肉眼では細かい形状や模様は分かりづらく、双眼鏡もあったほうが便利のようだ。

同じポケット図鑑に『日本の野草300 夏・秋』、『日本の野草300 冬・春』というのも出版されている。
街路樹の足下に生えている逞しい雑草が以前から気になっていたので、その花を観察してみるのも面白そうだ。

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孔子

2012/05/14 | ま行その他
お気に入り度:★★★★

礼学を追求し、試練を乗り越えていく孔子の姿をマンガで見る。ももなり高画、 竹川 弘太郎作『孔子』
孔子 内容紹介(第一巻裏表紙より)
――日本に「論語」がもたらされたのは、応神天皇の時代、王仁によってであるという。以来「論語」は広く日本人にしたしまれ、江戸幕府が開かれると、徳川家康は儒教を採用し、武士階級はもちろん寺子屋でも教科書とされるようになった。
「論語」とその主人公孔子は、日本人にとって、時代を超えて関心を寄せられる大きな存在なのである。
儒教の始祖・孔子の生涯を描いたマンガ。
『子曰く……』が耳に残る論語は、孔子とその高弟の言葉や行いを、弟子たちが書物にまとめたもの。

日本でも徳川家康が儒教を採用し、武家だけでなく、寺子屋でも教科書とされるようになったが、今の日本を見ると、相手の礼に敏感になり、非礼に憤ってしまうのは、儒教が正しく伝わっていないからではないだろうか。
それとも礼をしなければいけないという『ルール』に縛られてしまったせいだろうか。
大事なのは、礼というルールではなく、自分がどんな礼をするか、なのだが。

孔子は、礼を学ぶためにさまざまな苦難に遭うが、それを乗り越えてまでも礼学を広めようとする熱意が凄い。
今の時代、これをやると、胡散臭い新興宗教と思われてしまうのだが、昔は色々な思想が勃興したんだなぁと、昔に思いを馳せてしまう。

ところで、堅苦しい礼の形を崩さない孔子と、常に自然体の老子(道教の創始者)が語り合う場面が印象に残った。
老子は孔子にこう言う。

「わしには“礼は乱の首(はじ)め”としか思えんのじゃが……。つまり、礼は真心というものが薄くなって初めて生ずる。国ごとに違った様々な作法で、それがぶつかれば争いのもとになるのではないかと考えるのじゃ」

「では、先生は礼など学ばぬほうが……と?」

と問う孔子に、老子は答える。

「うむ。わしの考えは、礼に限らず“学を絶てば憂いなし”というものなんじゃ。人は中途半端に学び、知恵がつくと悩みばかり多くなるということじゃ。」

「では先生は今まで何のために万巻の書を読んでこられたのですか」

「一言でいえば無為自然に返るためよ」

対して孔子の考えは、「無為自然で世の中が治まるのでしょうか」であり、礼が平和な世を作ると考えたのではないだろうか。
その平和な世の中を作ろうとする情熱が、さまざまな困難を乗り越えさせたのかもしれない。

孔子(1)
孔子(1)
孔子(2)
孔子(2)
孔子(3)
孔子(3)
画:ももなり 高 作:竹川 弘太郎
講談社 1999-11
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水滸伝

2012/05/12 | な行その他
お気に入り度:★★★

マンガで描く梁山泊に集結する好漢たちの戦い。沼田清画、久保田千太郎作『水滸伝』
水滸伝 内容紹介(第一巻裏表紙より)
宋代の末期、皇帝は洪信(こうしん)将軍を悪疫退散の祈願を虚清天師(きょせいてんし)に依頼する旅に出す。洪信が竜虎山で禁忌の石窟を開いた時、百八の魔星が飛散した。この魔星郡が水滸伝の発端だ。
一方ごろつきの高俅(こうきゅう)が徽宗(きそう)皇帝にとり入り大尉に昇進、その祝いの席に欠席した王進を殺せと命じた。逃亡した王進は、史進に棒術を教えたが史進も義のため流浪。魯智深も悪漢を殺し五台山へ、大相国寺へと流亡。これらの逃亡者たちが、続々と梁山泊に集結、物語は佳境にはいるのだ!
水滸伝は、「中国四大奇書(水滸伝、三国演義、西遊記、金瓶梅)」の一つで、伝奇歴史小説。
講談で語り継がれた好漢たちのエピソードが、物語としてまとめられたものと言われている。

汚職や不正の宋代末期。
やむなく罪を犯したり、罪に陥れられたりして身の置き所が無くなった108人の者たちが、梁山泊に集結。
彼等が、悪党や、私利私欲をむさぼる権力者と戦う様子が描かれている。

水滸伝はいわゆる遊侠物語で、義に厚く、それを守るためには、命さえ惜しまない、一本筋が通った男たちの姿を描いたものだ。
義侠心に厚い彼等だから、私利私欲をむさぼる者、権力を振りかざす者は大嫌い。自慢の腕っぷしで懲らしめる。
そうなると暴力的ということで捕まり、処罰され、そんな理不尽な世の中を捨てて、旅をする。
そんな彼等が行き着くのは、義を旗印に集まった者たちのいる梁山泊。
しかし、権力者が自分を転覆させかねない梁山泊を放っておく筈もなく……。

ところで、遊侠者たちを集結させた梁山泊は、義の桃源郷のように思う。
人々は、理不尽な世の中や、腐敗した政治に不満を募らせた時、義のシンボルである梁山泊に思いを馳せ、溜飲を下げたのかも知れない。

個人的には、水滸伝はあまり好みではない。
豪傑ぞろいで、できすぎ感は否めない。

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チンギスハーン

2012/05/11 | 横山光輝
お気に入り度:★★★★

モンゴル帝国を築いた男の隆盛を描いたマンガ、横山光輝作『チンギスハーン』
チンギスハーン 序章より
十二世紀。モンゴル高原には多くの異民族の遊牧民が住んでいた。一つの部族は、いくつかの同族が集まって、集落を作り暮らしていた。
各部族は、互いに争いをくり返していた。――略奪や殺戮――まさに無政府状態であった。これは、水と草を求めて移動する、遊牧民族の避けられない宿命であった。
彼等は、他の部族を襲うと、男は皆殺しにし、女と家畜は奪った。一夫多妻制の遊牧民は、奪った女を妻とした。当時、モンゴルには文字はなく、その闘争の歴史は、親から子へ、その子からまた次の世代へと、口伝で伝え残していった。
口伝は「上天(あまつかみ)より命(みこと)ありて生まれたる蒼き狼ありき。その妻なる惨白(なまじろ)き牝鹿ありき。大いなる湖を渡りて来ぬ――」から始まった。
多くの部族が対立するモンゴル高原で、モンゴル族が勢力を拡大し始めるところから、そのハーンとなったテムジンがユーラシア大陸を席巻し、西夏国の完全支配を前に亡くなるまでを描いている。
とにかく戦いにつぐ戦いで、ユーラシア大陸を次々と征服していくモンゴル帝国の強大さが、よく分かる。

その勢力を広げていくときに役立ったのが、金国遠征時に連行した学者、技術者、占卜者、医者、職人などの特別な技術を持った者だ。
その中には、チンギスハーンの片腕として、よき相談役となる耶律楚材もいた。
彼等のおかげで、モンゴルのすべての技術が大きく向上していったことが、この作品で描かれている。

その一方で、他部族の女を攫い、子を産ませたことで起きる違う部族の血が流れる兄弟同士の争いや継承の問題、信心深いモンゴル族が重用する巫者の政治介入など、新興国家ならではの産みの苦しみなどが描かれており、チンギスハーンの英雄伝ではないのが嬉しい。
こうしてみると、かつて家柄、血筋で覇権を争っていた日本も同じような気がする。

ところで、作中にモンゴル帝国が、中央アジアを支配する強大国ホラズム王国(現在のウズベキスタンとトルクメニスタンあたり)との交易を始めようとした場面が描かれている。
文化が高く、織物や工芸品にいたるまで素晴らしい物を生産するホラズムと交易することで、新たな文化を吸収するため、ホラズムに百五十人の正体を派遣。
しかしホラズムのオトラール城の総督は、品物購入に運んできた隊商の金貨銀貨を独り占めするため、隊商がモンゴルの間諜であるとして処刑してしまった。
それに怒ったチンギスハーンは、ホラズム遠征を行い、これを平定した。

この話を読んだとき、元寇を思い出した。
モンゴル・クビライの頃、日本に通交と親交を求めて使節が国書を持ってきたが、国書には「兵を用いることは好まない」という脅しともとれる言葉が含まれており、また日本に渡来していた宋の僧侶から中国大陸における暴虐を知り、これを無視。
その後、何度かやってきた使節への返事も無視。
やがて元が攻めてきて『文永の役』が起きる。

モンゴルのホラズム侵攻も、これと同じ要領だったような気がしてならない。

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